文部科学省への意見書
文科省がパブリックコメントを募集していたので,私も18日にメールで意見を送った.
→行政刷新会議事業仕分け対象事業についてご意見をお寄せください
私は主に,11月13日の第3分科会をストリーミングで見ていたのだが,とんでもない結果になり,いろいろと考えることが多すぎて,落ち着くまでしばらくかかった.
ちなみに意見書では,予算削減が持つ危険性と同時に,文科省のスタンスの曖昧さを指摘した.そして,将来への確固たるビジョンを持って予算を再構築して欲しいと書いた.少しでも日本の将来に,そしてアカデミアの将来に繋がれば,と思う.
12月15日まで受け付けているらしいが,早めに送っておいた方が良いだろう.
なお,同様の意見書を公開している方が何人かいるようなので,以下に記載しておく.
- 科学・技術の生態系と「政治」の役割について(生命科学者 上田泰己)
- 緊急メッセージ、未来の科学ために(科学政策ニュースクリップ)
- 「日本版EDUCAUSE」のススメ(The Shigeta Way)
(以下に,私が送った全文を掲載しておきますので,興味のある方はご覧ください.)
(なお,このエントリは19日に別のblogに投稿したものを転載しています.)
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私は主に,競争的資金(先端研究,若手研究育成,外国人研究者招聘)の部分を視聴しておりましたが,そのときに感じたことをお伝えしたいと思います.
まず,こうした研究に関する予算が軒並み削減されることに対して,強く反対いたします.科学立国を目指す国が,まさにその分野における将来への投資を削減すれば,その結果は自ずと見えてきます.研究の停滞,頭脳の流出,そして諸外国で開発されたものを「お金を払い続けて」使い続けていく・・・いったい日本には何が残るのでしょうか?効率の良い税金の投資と言いますが,良い研究は厚い研究者層から生まれることを考えると,近視眼的な税金の投資はむしろ害悪でさえあると言えるでしょう.このあたりはニュージーランドの失敗例も参考になさると良いのではないかと思います.
次に指摘したいのは,文部科学省のスタンスについてです.今回の仕分け会議では,仕分け人からの厳しい(ある意味では非合理的な)指摘がいくつか寄せられました.しかしそれに対して,文科省の方は「誠意を持って」「自分たちの考えをきちんと説明」していたでしょうか?私にはそうは見えませんでした.本当に必要だと感じているならば,毛利さんのように,きちんと反論できたのではないでしょうか?もちろんそれで仕分け人が納得するとは思えませんが,国民は,そういう誠実な態度をきちんと見ています.今回私が落胆したのはまさにこの点でした.
これまで,文科省では多くの政策を行ってきましたが,それらはきちんとアセスメントされていないのではないですか?たとえばポスドクの問題についてご指摘申し上げますと,この問題は,十数年前に大学院重点化を打ち出したときにはすでに危惧されていた問題です.そして現在,実際に問題になっています.仕分け会議ではまさにこの点が指摘されていましたが,文科省の方はうまく答えられていなかったと感じました.
「博士課程に行った人が優遇されるのはおかしい,自分が悪いのだから,自然淘汰に任せればいい」という発言もありましたが,これなど,文科省の方はすぐに「何を言っているのだ,そういう学生を優遇しなくて,誰を優遇するのか?誰が日本の将来の科学技術を支えるとお考えか?」くらいの反応を示すべきだったと思います.
このやりとりにも現れているように,現状ではポスドクを問題として認識はなさっているようですが,それが本当に解決すべき問題であると感じていらっしゃるようには思えないのです.だからあのような受け答えになってしまったのではないか,と感じました.
最後に,私を含め,多くの方が仕分け人(民主党)に対して,日本のビジョンを示して欲しい,と感じていると思います.それは逆に言えば,文部科学省に対しても同様です.今後ロングレンジで,日本の科学技術をどのように「育てて」いくか,それを支える高等教育をどのように展開していくのか,まずは文科省自らが国民に示し,その上で,もう一度仕分け人(政権党あるいは財務省)と対峙して欲しいと考えます.
その際にはもちろん,徹底的に無駄(たとえば中抜き財団法人や天下り等)を省くべきなのは言うまでもありませんが,何が無駄で何が無駄でないのか,それをきちんと把握したうえで,削減するべきものを削減すべきです.日本の将来を見据えた,確固たるビジョンの元で予算を再構築なさることを強く望みます.
以上です.