New World Symphony
3日の木曜日,Toronto Symphony Orchestraの演奏会を聴きにRoy Thomson Hallに行きました.今回のプログラムは,以下のようになっていました.
Bramwell Tovey, conductor
Andrew McCandless, trumpetBramwell Tovey: Urban Runway
Bramwell Tovey: Songs of the Paradise Saloon (TSO Commission/World Première)
Dvořák: Symphony No. 9, “From the New World”
ドボルザークの新世界は,私が好きな曲でもありますから,とても楽しみにしていました.
前半の2曲は,今回の指揮者であるToveyが手がけた曲です.Urban Runwayは6分ほどの曲ですが,ものすごくリズムが複雑というか,重層的な掛け合いになっている曲でした.とくに打楽器の掛け合いはすごくて,アレは演奏するのは大変だと思います.そしてマリンバがいい味出してました.
2曲目はTSOの主席トランペット奏者,McCandlessのために書かれたコンチェルトで,世界初演(と言っても今日は2回目の公演)です.こちらも現代曲でした.ソロトランペットはC管,D管,コルネット2本,Flugel horn,piccolo trumpetを持ち替えるという,ラッパの見本市みたいな曲でした.もちろんマウスピースも替えています.(腹巻きのようなものにマウスピースを差して,入れ替えていました).でもさすが主席トランペット奏者ですね.非常に難しいフレーズ(跳躍やらハイトーンやら)がこれでもか,と出てくるのですが,見事に吹きこなしておられました.
この曲が始まる前には,McCandlessとToveyが簡単なトークをしました.観客からも笑いが出るなど,お互いジョークを飛ばしまくっていたようです.残念ながら話している内容はよく聞き取れず,なぜみんなが笑っているのかは分かりませんでしたが・・・
休憩後,座席に戻るとまず驚いたのが舞台上の配置でした.前半の2曲で使用していた打楽器,ハープ,ピアノ,チェレスタなどが無くなったこともあり,両翼が大きく開いていました.そして左の空いているスペースにシンバルとトライアングル奏者が一人,右は舞台の奥に金管がいるのですが,その前が大きく開いています.
これが災いしたのでしょうか,今夜の新世界はあまり揃っていない印象を受けました.さらに,観客も(演奏者も)次第に集中力を失っていくのが,手に取るように分かりました.季節柄仕方ないかもしれませんが,絶妙な間合いでのせき・くしゃみ,すべての楽章の後でのまばらな拍手.
個人的には,2楽章の最初,有名なコールアングレのソロ(遠き山に日は落ちて)の最後に重なるクラリネットが「リズム違う+音色?」だったことが非常に残念でした.クラリネットは全曲を通してぱっとしませんでした.また,大好きなティンパニも,今回はなんだかところどころで「主張しすぎる」ように聞こえることがあり,オケのばらばら感をより一層感じる原因となりました.そうなると,出だしのホルンの吹きミス(これは仕方ないのですが)も,今日のこの演奏を暗示していたのかもしれない,などと,悪い方,悪い方へと考えが進んでしまうものです.
もちろんプロですから,大きなミスがあるわけではなく,きっちりとまとめてはいます.ただ,有名な曲だけに,聞いている方にも「事前知識」と「(自分が勝手に思う)最高の演奏のイメージ」がこびりついてしまっていたのかもしれません.とくに前半が良かっただけに,後半は少し残念に思いました.