日本人が科学を理解する日
民主党が政権党になり,無駄を省く目的で始まった「仕分け事業」.科学技術や若手研究者にとっては,非常に厳しい結果となり,現在あちこちで大きな話題となっているのはみなさんもご存知だと思う.
たとえば,ノーベル賞受賞者らが声明を出したり(朝日新聞digital C-netの記事),それはお門違いだと反論するblog(たとえば「ノーベル賞受賞者等の緊急声明もお門違い」)が現れたり・・・個人的におすすめなのは,「スパコン凍結など、事業仕分け報道を見て思うこと」(大学プロデューサーズ・ノート 【早稲田塾】)である.これを読むと,12月1日の時点で,どのような反応があったのかを,スパコン凍結反対勢力と,それに疑問を唱える勢力とに分けて提示してあり,同じ問題でもこれほど捉え方の違いがあるのかと,とても興味深い.
もちろん研究者個人もいろいろと情報発信をしている.たとえば京大の柳田先生のブログ(生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ)では,柳田先生が今回の仕分けに対して批判を繰り出しているが,それに対して多くのコメントが寄せられており,そのコメント内で反対賛成入り交じった議論となっているようだ.
その議論の中で,私が一つ気になったことがあった.科学者たるものその結果をわかり易く国民に説明する必要があると言うが,では国民の側にその準備がそもそもあるのか,という指摘である.(辞職の道しかない鳩山首相、研究者は本当は節約好きなのに、これでは日本は死ぬと言った名大学長,というエントリの,生命卒業生 at 2009-11-28 10:53あたりのコメントを参照)
この指摘は非常に重要だと感じる.たとえば,子供の理数系離れが叫ばれて久しい.あるいは,テレビで科学的な番組を見ることもほとんどない.たまに見かけてもいわゆる「エセ科学番組」(心理テストとかスピリチュアルとかマイナスイオンとか)ばかりだと感じる.もちろん今年に入ってからは,日本のテレビを見てないので分からないが・・・
少々穿った見方になるが,この背景には,そもそも日本人は科学を必要と感じていないことがあるのではないか.(もちろん自分のことは棚にあげて,こういう指摘をしている.)だから,視聴率に敏感なマスコミ(テレビ)は,大衆が好きそうな番組ばかり流すことになってしまう.それがさらに国民の科学離れを加速させていく.このあたりは,卵が先か鶏が先か,の議論になってしまうかもしれないが,こういう負のスパイラルがあるような気がする.
多くの国民にとって「テレビ」はとても大きなメディアである.これしか情報源がないという人も多くいる.それほど大きな影響力を持っているのがテレビである.だから私は,テレビが先頭に立って科学を広めなければ,国民の理数系離れは収まらないだろうと思うし,逆に言えば,テレビをうまく使えば,国民が科学を理解するのにとても役に立つのではないか,とも考えている.
それではどうすればよいか?実はこれが一番難しい問題かもしれない.以下,私が思いつくことを列挙するが,門外漢の意見なので,その実現可能性については不明である点,ご了解いただきたい.
・テレビの他チャンネル化
現在の日本のテレビは,少ないチャンネルしかないのにもかかわらず,各社が同じようなことを同じようにしか伝えない.しかも視聴率が取れなければ即中止となる.これをやめ,アメリカやカナダのように,チャンネルを専門化させてはどうだろうか.その中の一つのチャンネルで,科学番組を専門に放送するものを作るのである.これを実現させるには現在のスポンサーの制度を見直す必要もあるが,うまくいけばコンテンツとスポンサーを切り離すことができ,コンテンツの再利用に光が当たるかもしれない.
・PhDを番組制作に活用する
専門的な知識を持った人を,番組制作の現場で活用する.時代劇で時代考証をするのと同様,科学番組でもそういうことが必要だろうと思う.編成にもそういう人を入れることで,過度にバラエティとワイドショーに偏っている現在の番組編成を見直すことができれば,と思う.
他にもたくさんのことが思いつくかもしれないが,さっと思いついたのはこの2点である.